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動物のタクシーにのって-情報が解き明かす動物行動学

はじめに

 こんにちは、あくあたん工房GWアドベントカレンダーの5月2日分の記事を担当します。
自分でつけておきながらよく分からないタイトルだと思われるだろうなあと感じています。始めに注意として書いておくと短い分野の紹介のようなものであり、情報技術の話は出てきません。
先に言ってしまうと、今回の僕のテーマは「バイオロギング」についてです。このテーマを選んだのは僕が好きな分野でそういった記事や本を読んでいたのもありますがもう一つ大きな理由があります。その理由については最後の方で触れることにして、それでは「動物のタクシーにのって-情報が解き明かす動物行動学」を始めていきましょう。

バイオロギングってなんだ?

 「バイオロギング」という言葉をご存知でしょうか。直訳すると「生物+記録すること」となり、初めてこの言葉を聞いた人でもほとんどの人が「なるほど、生物について記録するんだね」とわかるはずです。実際には「バイオロギング」と呼ばれるものは「動物の行動についてログをとること」と言えば分かりやすいでしょうか。実はこのバイオロギング(まだバイオロギングと呼ばれる前のことです)は興りとしては50年以上前になるのですが、90年代にデジタルのデータロガー(動物の体に取り付ける調査機器だと思ってください)が開発されたこと*1でおおよそ現在の形として確立することになります。(それまではアナログ式だったわけです。)これを皮切りにしてこれまではできなかった機器の小型化やコストの問題などが技術の進歩で解決され普及していきます。対象となる動物は理屈の上ではすべてです。が、研究対象を見ている限りでは実際にはデータロガーの取り付けが容易な種が多くを占めるようです。
 バイオロギング自体の種類としては調査対象となる動物を捕まえてデータロガーを取り付けて再び自然に還してそこからデータを収集するものから、発信機をつけて位置を知るもの、もっとスケールの大きな話だとGPSを使うことよって遊泳や移動を画像から探っていきます。でも、彼らの行動の何を記録するんでしょうか。

バイオロギングができる前は

 動物のログを取ると聞いて「場所」というのはまず思いつくでしょう。動物のいる位置を記録したデータは季節の変化や気候の変化によって動物がどのような行動をとるのかを教えてくれます。さて、突然ですがあなたは18世紀にタイムスリップしたとしましょう。そこでは渡り鳥(例えば日本人にはなじみ深いツバメとしましょうか)についてなにやら疑いをかけている男がいるようです。

男はツバメが季節によって北上や南下をするというのは聞いた話で知っています。しかしこんなことを言い始めました。

「オラァよ、ツバメが北上や南下をするってのは聞いたぜ。でもよ、どんな風に移動するんだ。てかホントに北上とか南下してるのかよ。ありえん長距離飛んでるらしいけど体力持つのかよ。ウソくせぇ~~。」

そこで男は彼らを追いかけることにしました。

自分が疑いをかけたことについて体を張って調べる律儀な男だったようです。さらっと「追いかけることにした」と書いていますが、この後どうなるか(どんな生活をおくることになるか)は想像に難くないでしょう。僕たちが春になると目にするツバメは東南アジア地域から飛んできます(この地域間を行き来するわけですね)。移動手段に乏しい18世紀(日本にはまだ黒船すらきていません)にツバメを追える人間は超人以上の存在でしょう。しかもツバメはまだ目視が可能なのでマシな方です。水中の生き物たちはもっとややこしくなります。バイオロギングの技術が生まれる前に同じことをしようとすると途方もない労力がかかっていたわけですね。

水中でどうやって場所を知るの?

 さて、現代に話を戻しましょう。現代には素晴らしい機器が開発されています。それが発信機です。コナンさながらに小型の発信機を動物につけて放して位置を調べます。陸地の動物の場合は電波を使った発信機を使います。ツバメのような渡り鳥はこの方法によって位置を調査できるわけですね。ですが水中ではそうもいきません。電波が使えないんですね。それじゃあ仕方ない、水中で行動する生物の位置を知るのは諦めるか・・・とはなりません。電波がだめなら測定可能な超音波を使います。方法としては超音波を感知する受信機をあらかじめ海中(海底)に設置して近づいてくるとそれを記録する方法、あるいは実際に追いかけて調べる方法(結局追いかけるの!?となりそうですが)があります。これで彼らの位置を知ることができます。発信機を使う以外の方法には目印となるようなタグを対象生物につけて放すといった方法もありますが、これは捕食される可能性やそのまま二度と捕まえられずに死んでしまってもそのことが分からないといった可能性もあり、なかなか厳しい方法かもしれません。そういった意味では機器が正しく動作する、ある一定の範囲を受信機が網羅しているという条件さえクリアしていれば発信機による位置の追跡は非常に有効な手段となるわけです。

位置だけじゃない!

 ログをとるのは動物の位置に限りません。「鳴き声」、「はばたき方」、「遊泳する速度」、「体勢(姿勢)」などを研究の対象としている方もいます。何を調査の対象とするのかは研究者次第です。「はばたき方」なんかは「そんなのもとるのか」となるでしょう。「鳴き声」は人間が耳で聞いて「高い」とか「低い」というあいまいな尺度ではなくてデータに記録された具体的な周波数によって判断できるわけです。野生の動物たちは僕たち人間以上に音を使い分けています。生殖行為や群れを助けるため、威嚇など彼らが生きるため多くの場面において音は重要な要素であり、これらを知ることは動物への理解を助けてくれます。

それでも意外に大変かも!?

 ここまで書いてきた中で、「なんだ、データを取るのってすごい楽になったんじゃん」と思われる方も多いかもしれません。ですが重要なことがあります。

「データロガーのデータってどうやって回収するんだ・・・?」

そうなんです。ここが問題になります。データロガーは回収しないといけないんです。研究データとして位置だけを知るならただの発信機でどうにかなります。しかし別のもっと詳しいデータがほしい場合はデータロガーが必要になります。データロガーはその内部にデータを記録しているため取り付けた生物を再捕獲する必要があるわけですね。最近ではデータロガーに加えて発信機も対象の生物にとりつけてそれによって場所を特定し捕獲する流れがあります。こう聞くと「あれ?意外に大変かも」と思われるでしょう。捕獲できなかったらデータ0になるわけです。理系大学生としてはデータ0は恐怖でしかない・・・。

ログを取る意義

 お分かりのかたも多いと思いますが、これらの調査によって得られたデータは動物たちの保護のために活かされます。2019年4月末現在、環境省が指定するレッドリストに登録されている日本国内の野生生物は3,676種です。IUCN(国際自然保護連合)の報告では世界で植物も含めた27,000種以上が絶滅の危機に瀕しています。この絶滅に瀕した動物たちが生息できる環境を作り上げていく(取り戻す)ための具体的な指標を作成するためにも動物の行動を知ることは重要な意義があります。

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IUCN公式ホームページより
また研究者の単純な興味もあるでしょう。動物好きなら動物がどんな行動をするのか気になる!となるのは当然ですよね。

情報と関わる分野は想像よりも広がっているかもしれない

 僕が今回ここに書いたことの中で、情報分野が活かせることが多くあったことにお気づきでしょうか。得られたデータから動物の行動を分析するのにコードを書き、解析ツールを使うのはもはや普通のことになりつつあります。また動物に限らず植物を含めた各地に散らばっている生態系のデータをまとめて大きなデータベースを作り上げようという試みもあり実現すれば環境や生態系に対する新たな知見が研究者たちによって得られる可能性が大きくなります。
 冒頭で話していた僕がこのテーマを選んだもう一つの理由はこのように他分野との融合、いわゆる学際分野について紹介したいと思ったからです。そして今回はどちらかというと僕は情報の「ものづくり」や「データ分析」の側面を持った部分と他分野との融合について紹介させていただきました。「間違って情報分野に進んでしまった」と感じている人はこういった部分に目を向けてみてほしいです。(技術系のAdvent Calendarを読む方々が間違って情報系に進んでしまった可能性は低そうですが・・・。)

さいごに

 なぜ僕が「動物のタクシーにのって」なんていうタイトルをつけたか分かってくれた人はいたでしょうか。今回は発信機とデータロガーを使用したバイオロギングをメインテーマとして紹介させてもらうにあたり、動物を「つかまえて」、ある意味で人間の感覚器官の延長とも言えるデータロガーという客を「のせて運んでもらっている」ところから考えました。彼ら動物が暮らせる環境を提供することが運賃といったところでしょうか。(多分これを読んで納得してくれた人はいない、表現が悪すぎる。タイトルを考えるセンスがない。)書き終わって読んでみて思いましたが、短いですねこれ・・・。こんなに短い理由は内容が薄(ry ですがまあこれ以上書こうとすると個々の研究の事例紹介になり(ほんとにおもしろい研究ばかり)それはそれで途方もなく長くなるので、これで今回の記事はこれぐらいにしようと思います。最後まで読んで頂けたならうれしい限りです。ありがとうございました。

おまけ?

最近、動物が好きなことを話す機会があったのですが「好きな動物は何」と聞かれて「動物は基本的に好きだからなあ」と思い、意外に答えに困りました。ですがふと頭に浮かんだのが「ユキヒョウ」で、「ああそういえばけっこう好きだなあ」とか思ったので紹介しておきます。寒い地域や高地に生息しておりその名の通り雪の降る地域でも生息しています。現在は絶滅危惧種に指定されています。画像は札幌市の円山動物園のホームページで見られます。
www.city.sapporo.jp
しっぽが大きいことに気づいたでしょうか。かわいいとかっこいいのハイブリッド。もふもふ。しかも野生の個体は生き方までかっこいい(断崖絶壁みたいな場所で獲物を追うすごいやつ)。円山動物園には行ったことあるけどその頃は大して動物に興味なかったからしっかり見た記憶がない。残念。

*1:日本のメーカーが初めて開発・実用化しました